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absorption 4話

4話

 少しずつ敵の正体がわかり始めてきた・・・・。
 バルタンが生み出そうとした生物兵器であるエヌピー。
 しかし、その生誕はトラブルによるものでバルタンの怨念が宿った融合生物となりウルトラマンに続き、ジャックまでも体内に取り込み力をつけてしまった。
 徐々に知能も増し、目的をもって獲物を取り込み始めたのだ。
 そして・・・

ヌゥゥゥゥゥゥゥッ・・・

 次元の隙間から滑り出した白い怪物。
 そこにいた次なる標的はエースとタロウだった。
 
エース「なっ・・今、どうやって」
タロウ「まさか?!超獣?!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・・・」

 二人が困惑するがたを楽しんでいるかのように奇声を発し、姿を消してしまったのだ・・・・手に入れたての能力を使って。

タロウ「ど、どこにいった?!」
エース「消えた?!」
タロウ「いったい・・・どこに?!・・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁ・・」
エース「タロウ?!」

 透明になった怪物は至近距離から狙いを定め、両手に装着したブレスレットから半月状の高エネルギー弾をタロウの足元に着弾させたのだ。
 その爆発でタロウは後方に吹き飛ばされてしまった。
 残されたエースを獲物の品定めでもするように見つめるエヌピー。

ヌラァァァァァァァ
 
エース「そこにいたのか?!覚悟しろ!」
 
 両腕を胸の前でクロスさせ、伸ばしたかと思うとカラータイマーから光線を放ち、姿を現したエヌピーを攻撃する。
 以前のエヌピーとは違い、攻撃をよける意識を身に着けていた。
 
エース「意外にすばしっこいやつだな!だが・・・そこだっ!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴ」

 隙をついたエースのタイマーショット・・それは怪物に命中するはずだった。
 しかし、予想外の出来事が起こる。
 エヌピーが同じ動きをしており、胸に光るタイマーから紫色の光線が放たれ本家タイマーショットとぶつかり拮抗しているのだ。

エース「こいつ・・・まさか?!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴっ・・ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ」

 エースとエヌピーの違いがあった。
 それは内在エネルギーや能力以外に1つ・・・タイマーの数が違うのだ。
 怪物の力強い声と共に2つのタイマーは怪しく光りニセの光線技が本家を超え始めたのだ。
 徐々に徐々に紫色の光線がタイマーショットを押し返し始めた。
 じりじりと、しかし確実に・・・。

エース「くっ・・くそっ・・・」

 あわや、光線がエースをしとめる!そんな寸前のところで高く飛び上がり窮地を脱するエース。
 さらに、その高さから急降下で勢いを増した蹴りを見舞う!
 数々の獲物を取り込み体が筋肉質になってきているエヌピーのボディが流動的であることなどエースにはわかるはずもなかった。

エース「(光線発射の硬直中の今ならば!)」

 ダークタイマーショットの発射直後を目掛けてエースの鋭いキックが直撃する。

エヌピー「ヴヴッ!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・」
エース「・・?!・・な、なんだ、その体は・・」

 体の中心部分に命中したエース渾身の一撃は体をすり抜け、逆にエースの体が腰元でロックされるという結果になってしまった。
 エヌピーの体に刺さるようにしてエースの体が交差している。
 怪物の背中側からはエヌピーの肉に包まれたエースの逞しい両足が飛び出しているのだ。

ズブ・・ズブズブ・・・・

 徐々に沈み始める体。
 とっさに全身にメタリウムエネルギーを巡らせ怪物の底なし沼のような体から逃れるエース。
 両足の肉片は外れる気配はなく、腰から下を魔の肉片に覆いつくされながらフラフラと立ち、エヌピーと対峙する。

エース「肉弾戦もダメ・・光線技も・・・・?!・・・ある・・1つだけ!」

 全身発光を受け崩れていた体を元に戻しエースに襲いかかろうとした瞬間。

エース「(カウンターする前に倒せばいいんだ!)ヴァーチカル・ギロチン!」

 巨大な光の刃がエヌピーに襲い掛かり、あの流動的な体を真っ二つにしていく。

エヌピー「ヴヴッ・・ヴッ・・・」

 途切れた声に合わせて両側に割れた体が倒れていく。
 ピクピクと痙攣する敵の体

エース「はぁ・・はぁ・・・くらえぇぇっ・・・メタリウム・光線!」

 息のあがった体で大きく振りかぶったLの腕から虹色の光線が放たれ、地面に転がるエヌピーの体を破壊していく。
 光線が命中すると粉々にはじけ飛び、原型を保っていなかった。

エース「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・・」

 両足の感覚が徐々になくなってきており、エネルギーの大量消費もあって地面に四つんばいになり呼吸をするのが精一杯の状況にまで追い詰められていた。
 
ネチャネチャネチャ・・・
・・・グニョグニョグニョ

 全くその場から動けないエースの背後で再生していくエヌピーの体。
 しかし、その事実に気がつく余裕のないエースは敵の前から動くことが出来ずにいた。
 瞬く間に体を元通りにしたエヌピーは腕を大きく振りかぶり、必殺光線のお返しとばかりにメタリウム光線発射のポーズをみせていた。

タロウ「兄さん、危ない!」

 全身に炎を纏い絶体絶命のピンチに陥ったエースを救うべく、ウルトラダイナマイトを怪物目掛けて放つタロウ。
 炎に包まれたタロウが接触すると白い怪物は大爆発し粉微塵に消し飛ばされた。
 自らの体も吹き飛ぶこの大技・・・即座に再生を始めるタロウ。

エース「(あの化け物・・まだ生きていたのか・・・・)」

 徐々に整ってきた呼吸に周りを見る余裕が出てきたエース。
 自分を助けてくれたタロウを見やると、そこには衝撃の光景が広がっていた。
 ダイナマイトからの復活をしてるタロウを飲み込むもうとエヌピーの体が覆いかぶさろうとしているのだ。 
 あれにタロウが襲われることは絶対に阻止しないといけない!
 エースの本能がそれを告げていた。
 両足の感覚がなくなっている状態だったはずが、今出せる最大の速度で走りより、力いっぱいタロウを突き飛ばした。

エース「危ない!タロウ・・」
タロウ「んぐわぁぁっ・・・?!・・・兄さん!」

 肉の波が迫り、今にもタロウを飲み込もうとした瞬間、危機一髪のタイミングでタロウを突き飛ばすことに成功したエース。
 しかし、その代わりに自らの体を生贄にささげる羽目になってしまったのだ。
 ヘッドスライディングの要領でタロウを突き飛ばしたまま、波が押し寄せる場所にうつ伏せで倒れこんだエースに悪魔の肉が覆いかぶさる。
 家族同然に育った兄が敵の体に飲み込まれるのは・・・一瞬の出来事だった。

タロウ「兄さん!兄さん!待ってて、今引っ張り出してあげる!」
エース「だめ・・・はな・・ろっ・・・・にげ・・ろ! んんんんっ・・」
タロウ「なっ・・・・そ、そんな・・・」

 もがく肉の塊からエースの腕が伸び、肉にまみれてはいるものの「来てはいけない!」というジェスチャーでタロウを静止する。
 その腕を見て、動きを止めるタロウ。
 しかし、そのタロウの前で腕は力なく引き戻されていき、全体がモゴモゴと動くだけでエースが抜け出せる気配は全くなかった。
 そして、徐々にその抵抗もなくなり声も聞こえなくなり、ついには動かなくなってしまったのだ。

タロウ「兄・・・・さん・・・・」

 徐々に人型を成形していくエヌピー。
 その胸には3つめのタイマーが輝き、頭部にはウルトラホールが現れた。

タロウ「飲み込んだ相手の特徴が・・・?!・・・ということは、他に2人、ウルトラ戦士が被害にあっているというのか!」

 皮肉にもエースが犠牲になったことでわかった事実はタロウを大いに動揺させ、混乱に陥れるには十分なものだった。
 敵を前に動きを止めたタロウにエヌピーが肉片をいくつか投げつけ、タロウを肉片にまみれさせて見せた。

タロウ「しまった・・・くそっ、とれないぞ・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・ヴッ!」
タロウ「・・?!・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・がぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

 エヌピーの合図でタロウの体に付着した肉片がそれぞれ大爆発を起こし始めたのだ。
 それは皮肉にも爆発の餌食になっているタロウの必殺技がコピーされたものだった。
 爆発を起こした肉片はさらに細かくなり再びタロウの体に付着していた。
 その小さな肉片も爆発を起こし、連鎖しながら獲物を絶えず起こり続ける爆発の中心に閉じ込めていた。
 体がボロ雑巾のように前後左右に爆発で翻弄され倒れることさえも許してもらえないのだ。
 不滅の体だからこそ出来る技だった。
 
ズダアァァァァァン

 ようやくタロウが地面に倒れることが出来たのは、肉片が爆発を起こせないほどの小ささになってからのことだった。
 全身に大火傷を負い、うつ伏せでプルプルと痙攣するタロウ。
 そんなタロウに容赦するほど優しい敵ではなく、メタリウム光線を放ち爆発で宙を舞う獲物をブレスレットの光輪で縛り上げ、空中に直立させたまま固定してしまったのだ。

タロウ「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

 光輪の強烈な締め上げに悶絶の声を上げる。
 手足をバタバタさせ苦しむが、拘束が解除される気配はない。
 苦しむタロウを他所に、胸の前で両手をすり合わせるようにするエヌピー。その隙間からエヌピーの体が水の様にタロウに吹きかけられる。
 腹部に命中する肉の流れは体を這うように広がり下半身は瞬く間に肉に包まれ、重力を無視し上半身も肉に包まれてしまうのだった。

タロウ「(今、あの爆発を起こされたら・・・死んでしまう)」

 爆発されるまでに逃げなくてはならない・・。
 そうは思っても体が動かず、反撃どころか逃げることさえも出来ない。
 焦るタロウにどんどん浴びせられる肉片・・・。
 顔を横に振り乱し抵抗を試みるが、何の効果もなかった。
 打開策が見出せぬまま、エヌピー本体がついにいなくなり、全てがタロウの元に集まってしまった。
 直立した肉の柱にタロウの顔だけが存在している・・・そんな光景だった。
 
タロウ「あうぅ・・・・・」

 突然、ブレスレットの拘束が解け、ヨタヨタと解放される。
 しかし、肉片に包まれたまま時間がかなり経っており体の感覚はなく立つことさえできなくなっていたのだ。
 肉の柱と化したタロウはそのまま地面にうつ伏せの姿勢で倒れこみ痙攣を始めた。
 唯一無事だった顔や頭も地面に倒れたあと、体から移動してきた肉片に飲み込まれていき、霞む視界に最期の光景を刻み込み完全に取り込まれてしまったのだった。
 エースとは違い抵抗することも出来ず、飲み込まれたタロウ。
 すぐさま、元の姿に戻ったエヌピー。
 その胸には4つ目のタイマーが光り、頭部にはウルトラホーンが2本現れていた。


 その頃、エヌピーの体内では・・・・・。

ジャック「エース!エース!しっかりしろ!」
マン「おい、タロウ!起きるんだ!」
エース「・・・んっ・・・こ、ここは・・・・」
タロウ「生きて・・いる?!・・・」
ジャック「ようやく目が覚めたか」
マン「心配したんだぞ・・・」
エース「兄さん・・その姿は一体・・・」

 目を覚ましたエースとタロウ。
 二人もやはり四肢が肉の壁に飲み込まれており、繋ぎとめられた格好になっている。
 体内にウルトラ戦士が飲み込まれていることを悟っていた2人は自らの姿にそこまでの動揺はなかった。
 しかし、彼らが驚いたのはウルトラマンの姿だった。
 四肢の付け根までが飲み込まれているジャックの姿はいずれ自分達がなるであろう姿として違和感はなかったが、ウルトラマンのそれは予想もしない光景だったのだ。
 ジャック同様に四肢の付け根までが肉の壁に飲み込まれているのだが、肉の壁にかろうじて取り込まれていない体にも半透明の膜が覆いかぶさっており、無事な部分はどこにもなかったのだ。
 濁ったゲル状の膜に覆われているウルトラマンの横には石化したバルタン星人の姿も見て取れた。

エース「兄さん達、大丈夫ですか?」
ジャック「あぁ、今のところはな・・・」
タロウ「今のところは・・って・・・」
マン「俺はまもなくこのバルタンと同じ状態になってしまうんだ」
エース「そ、そんな・・・・」

 よく見ると、ジャックの体にも膜は忍び寄っており、腹部はもうゲル膜に覆われていた。
 事態を説明し終わった時、ついに恐れていたことがおき始めてしまった。

ピコン・・・・ピコン・・・・ピコン・・・・・
・・・パキキッ・・・・パキ・・・

 突然、なり始めたウルトラマンのカラータイマー。
 その音に連動してウルトラマンを覆う膜が石化を始めたのである。
 
マン「ついに始まってしまったのか・・・」
ジャック「兄さん、諦めないで!」
エース「な、何か・・何か方法は・・・」

 焦る3人をあざ笑うようにゆっくりになっていくタイマーの警告音と勢いを増す石化の波。
 自分達もいずれ・・・・そんな思いが3人の脳裏をよぎり、体が冷えていく想いだった。

 さらに事態は悪化するばかり。
 ウルトラマンが石に変えられようとしている最中、心臓が慌しくうごめき始めた。
 その動きを見守る4人は現れた犠牲者を見て絶句してしまうのだった。

マン「あ、あれは・・」
エース「間違いありません」
ジャック「ベムスターと・・・」
タロウ「タイラントです・・・・」

 エヌピーが狙った獲物・・・それはベムスターとタイラントの2体だったのだ。
 ベムスターが吸収されたことで体の防御力が上がるだけではなく、光線技を吸収した上でカウンターできるようになってしまったのだ。
 さらに、融合体であるタイラントを吸収することは能力が飛躍的に上昇することを意味していた。
 今のままでも歯が立たず、4人はこうして囚われの身に成り下がっているというのに・・・・。
 そんな絶望がたち込め始めた。
プロフィール

いぬいbまさる

Author:いぬいbまさる
どうも!いぬいBまさるです。
詳しいストライクゾーンなどは「敗北の味は密の味」にて

ここでは小説を掲載していこうと考えています。
図書館みたいになるといいなぁ~♪

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