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absorption 6話

6話

 宇宙にその名が轟くウルトラ6兄弟。
 平和を守る最強の戦士達だった・・・・。
 今や、宇宙を脅かす怪物としてその名が知られ始めたエヌピーの体内で石版に成り果て敵の体内で敗北した時間をとどめ続けていた。
 宇宙中の強者を取り込み誰にも止められない体を、力を手に入れたエヌピー。
 その怪物が向かったのは6兄弟の故郷・・・光の国だった。

 惑星上に張り巡らされた不可視のバリア網は次元潜行で難なくすり抜け惑星に降り立った。
 今や光の国の機密情報は全て頭の中にあるのである・・・6人の全てを掌握した今、ここはエヌピーにとってホームグラウンドと言っても過言ではなかった。

ウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・ウゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・

 突然現れた敵に鳴り響くサイレン。
 逃げ惑う民。
 呆然と立ち尽くすエヌピーにもようやく動きが見られた。

エヌピー「ヴヴヴヴ・・・ンヴヴヴヴッ!」

 体から幾つかの肉の塊を放出するエヌピー。
 地面に付着するとムクムクと巨大化する肉片。
 あるものはバキシムに、あるものはベムスターに・・・取り込んでいった怪獣たちに姿を変える化け物の体の一部。
 それはまるでこの怪物の眷属のように振舞っていた。
 目に生気の感じられない名だたる怪獣達は光の国を荒らしまわる。
 しかし、エヌピーの体から放たれたのは何も怪獣たちだけではなかった。
 地面にうずくまる姿が6つ・・・・ウルトラ6兄弟も眷属として存在していた。
 レーダーもバリアもかいくぐり現れた1体の怪物から予想もしない数の敵が街を破壊し光の国を蹂躙していく。
 その中にはもちろん、完全な操り人形にされた兄弟たちの姿も含まれていた。


???「そこまでだ!」

ビィィィィィィィ!
ドカァァァァァン!

 我が物顔で破壊活動の限りをするエヌピーの軍勢に空中からウルトラの父がファザーショットで足を止めさせる。

ウルトラの父「どうやって侵入したかはこの際いいだろう・・・もう勝手は許さん!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・・・」
ウルトラの父「言葉が喋れないのか?」

 ウルトラ警備隊大隊長に続いてレオやメビウス、ヒカリ・・・次々と駆けつけた戦士が各個撃破のために持ち場に着く。

ウルトラの父「お前の相手はわたしだ!」
エヌピー「ヴヴヴヴ・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・・」
ウルトラの父「これでもくらえっ!」

 ウルトラアレイを怪物目掛けてフルパワーで使用する!
 まばゆい閃光と共に衝撃が白い怪物を襲うが、やはり効果はないようだった。

ウルトラの父「な、何っ?!・・・効かないだと?」

 今までに数え切れないほどの敵を倒してきたウルトラの父の武器。
 そんな伝説にもなり得る武器でさえ、今のエヌピーにはまるで効果がなかった。
 そのことに動揺するウルトラの父に周囲からとんでもない声が聞こえてきた。

ヒカリ「くっ・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」
メビウス「大・・隊長・・すいません・・・・・」
レオ「ア・・アストラァァァァァァ・・・・」
アストラ「兄さぁぁぁぁん・・・・・・」

 次々に聞こえてくる断末魔の悲鳴。
 悲鳴を聞き、辺りを見回してみると、怪獣たちと応戦していた戦士達が皆、白く変色した流動体の怪獣達に飲み込まれ、その体内で蠢いて苦しんでいるのだ。

ウルトラの父「こ、これは一体?!・・・」

 警備隊の隊員はタワーを守りに付かせ、名のある戦士を率いて親玉を叩く作戦だったのだが、今やここに立っているのは父一人だけであった。
 さらに、悪夢は続いた・・・・。

ドスン!
ドスン!ドスン!ドスン!

ウルトラの父「お、お前たち・・一体どうして・・・・」

 そこに現れたのは6兄弟だった。
 行方不明になったはずが、今、目の前に勢ぞろいしているのである。
 しかし、その瞳はどこか邪悪な光が宿り、生気は感じられなかった。
 父の問いにも無言のまま、タワーを守護していた警備兵を地面に投げ捨てるタロウ達。

エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・ヴッ!」

 エヌピーの合図でメビウス達を取り込んだ怪獣や6兄弟は白く変色し蠢きながら元のサイズの肉片に戻りエヌピーへと還っていく。
 再融合した怪物は光の国の戦士をさらに取り込み力を蓄えた姿で父の前に再臨した。

ウルトラの父「・・・なるほど、そういうことか・・・・・」
エヌピー「ヴヴッ・・・」
ウルトラの父「息子達を返してもらうぞ!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴ・・ヴヴッ!ヴヴッ!」

 両手から放たれるアイスラッガー、それに両手のブレスレットの変形した光のブーメランが4方向から父を襲う。

ウルトラの父「それでやられるわたしではないわぁぁぁ!」

 ウルトラアレイからの広範囲へのエネルギー照射で刃を一斉に叩き落す。
 しかし、それこそがエヌピーの狙いだったのかもしれない。

ビビビビビビビビビビビッ!

ウルトラの父「・・ぐっ・・?!・・しまった・・・」

 4本の刃を叩き落した瞬間、手元に星型の光線が着弾し、ウルトラアレイを落としてしまったのだ。
 そのまま光線はアレイを弾き飛ばし戦闘フィールドからフェードアウトさせてしまった。
 武器を奪っただけで終わるほど優しいエヌピーではなかった。
 体を回転させ3本のリングを発生させ父を襲う。
 さらに、地面に落ちた光のブーメランもワイヤーの様なリングに変わりキャッチリングと共に獲物を締め付けるため、宙を舞う。
 ウルトラマンとジャックの技が同時に襲い掛かる!

エヌピー「ヴヴッ!」
ウルトラの父「・・?!・・か、体が動かない・・・ぐわぁぁぁぁぁ・・・」

 ウルトラ念力で動きを止められリングに体を縛り上げられる。
 ウルトラマン、セブン、ジャックの合わせ技とも言えるこの攻撃がエヌピー1人の手によって行われてしまったのである。
 足首と手首の高さ、胸元に肉片で出来たキャッチリングが・・。
 そして、ブレスレットで出来たワイヤーのように細いリングは体に食い込み等間隔で体中を締め上げる。

ウルトラの父「ぐっ・・・ぎゃぁぁぁぁぁ・・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・」
ウルトラの父「(こいつの体の一部が・・?!・・・まずいっ)」
エヌピー「ヴヴッ!ヴヴヴヴ!」
ウルトラの父「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」

 怒号と共に体にエネルギーを漲らせリングを弾き飛ばす。
 体に食い込むリング跡からは血がにじみ、痛々しい体になってしまう。

ウルトラの父「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・・」

 地面で四つんばいになり息を乱す。
 しかし、いそいで解除したものの体にはキャッチリングの拘束箇所にしっかりと悪魔の体がこびりついていた。
 
エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・ヴヴッ!」
ウルトラの父「な、何っ?!・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

 体にこびりついた肉片でウルトラダイナマイトを発動し獲物を爆発の中に閉じ込める。
 タロウを捕獲するときにも使用した連鎖爆発を起こすエヌピー。
 プリンスが敗北したあの悪夢を再現していくのかと思われたが、爆発の止んだ煙の中、倒れることなく立ったままのウルトラの父がいた。

ウルトラの父「こ、ここでやられるわけにはいかない・・・息子達のためにも!」
エヌピー「ヴッ!ヴヴッ!」
ウルトラの父「ま、まだ・・?!・・・ぐっ・・・くはっ・・・・」

 全身に火傷を負い、フラフラの父に追い討ちをかける!
 無数の光のギロチンが両足に放たれる。
 今にも倒れそうなのをなんとかこらえている父にエースの必殺技を避けられるほど力は残されていなかった。
 無残に切り刻まれる英雄の両足。
 血まみれになりながら膝を突き、屈ししまう。

ウルトラの父「くそっ・・・はぁ・・はぁ・・・あ、脚が・・」

 両足は気合でどうにかなるような傷ではなかった。
 フルフル震える体に再び襲い掛かる息子達の技!

ウルトラの父「あがっ・・・か、肩が・・・・く・・・そっ・・・・」

 両膝をついたウルトラの父の両肩に突き刺さる2本の槍・・・。
 ジャックのブレスレットとタロウのブレスレットが変形した槍が両肩にそれぞれ突き刺さっているのだ。
 両足も両腕も再起不能にされ完全に動きを封じられた獲物。

エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・・」
ウルトラの父「はぁ・ぁはぁ・・・?!・・・ぁぁっ・・・」

 四肢を潰された父が見たのは驚愕の光景だった。
 千手観音の様に腕が生えたエヌピー・・・その腕の1本1本に最愛の息子達の必殺の光線が発射状態になっているのだ。
 脚が負傷している今、逃げることも出来ない。
 腕が負傷している今、反撃も防御も出来ない。

エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・ヴヴッ!」
ウルトラの父「くっ・・ここまでなのか・・・」

 覚悟を決めた父に6兄弟、たった今吸収されたメビウスやヒカリたちの技もまでもが敵の放つ光線として襲い掛かってきた。

ズドォォォォォォォン
キュィィィィィィィン・・・・・

 周囲の建物をも吹き飛ばす大爆発を起こし、戦闘していた市街地をさら地にするほどの衝撃だった。
 その爆心地には仰向けで倒れるウルトラの父・・・・。
 腕が背中に収納された怪物はゆっくり、ゆっくりと父に近寄る。
 その手は優しく首に回され、父を抱き起こす。
 傷ついた背中から覆いかぶさるようにする。

ウルトラの父「がはっ・・・っ・・んぐっ・・・・・」
エヌピー「ト・・・トウサン・・・・」
ウルトラの父「・・?!・・・」
エヌピー「トウサン・・・・ゴメンナサイ・・・・」
ウルトラの父「・・・・・・・・・」

 謎の言葉を発し、両手を首元から回し抱きしめると父を優しく、優しく肉片で包み込んでいく・・・。
 体を包み込み終わると顔に肉片が上り始める。
 逞しい体も立派なウルトラホーンも全てが怪物の体に飲み込まれ警備隊大隊長は息子達の元へと向かうのだった。

absorption 5話

5話

 誕生した時と比べて途方もない力と恐るべき能力の数々を身に着けたエヌピー。
 あの最強と謳われたウルトラ兄弟のうちすでに4人が体内に取り込まれてしまっていた。
 時間が経つほどに強力になっていく悪魔。
 その底なしの欲望はさらなる獲物を見つけて動き出していた。
 次に狙われたのはウルトラ兄弟3男・・ウルトラセブンだった。

バリバリ!バリバリ!ガシャァァァァァン!

 派手に次元を割り出てくるエヌピー。
 その姿は筋肉を蓄えた細身の宇宙人・・・そんな印象を受ける姿に変わっていた。
 しかし、胸には青く輝くクリスタルが4つ存在し、胸元には見たことのあるプロテクター。
 さらに頭部には2本の角と鶏冠の様な部分の先端には穴が1つ存在していた。
 両腕には黄金のブレスレットを装着していた。

セブン「(なんだ・・こいつの姿・・・・)」

 どこかで見たことのあるものばかりが寄せ集めの様に存在する目の前の宇宙人に戸惑い、距離をとって観察を続けるセブン。
 言葉1つ発せず、じっとこちらを見ているような・・・しかし、目が存在しないため見ているのかどうかさえわからなかった。

エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・・・!」
セブン「今よりお前を敵とみなす!覚悟しろ!」

 動き出したエヌピーに対してファイティングポーズをとるセブン。
 地面がはじけ飛ぶほどの加速を見せ、前傾姿勢で迫り来るエヌピー。
 その右手はうねうねと蠢きながら変形しタイラントの持つ鉄球へと変化した。
 その鉄球が加速した体を発射台代わりにしてロケットの様に飛び出しセブンを襲う。

セブン「くっ・・危ない・・?!・・・これでもくらえ!」

 ぎりぎりのところで鉄球を避け、カウンターとばかりにアイスラッガーを投げつける。
 幾多の敵を切り刻んできた自慢の刃はエヌピーの右腕を切り裂いた・・かに見えたが、切断と同時に再生が始まり傷も残らず、刃は主のもとに戻っていった。

セブン「な、何っ・・・な、ならば!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・・」
 
 アイスラッガーを跳ね返したのではなく、受けても無傷だった・・・・その驚愕の化け物は不気味にうなり、セブンを見つめているだけ・・。
 額に両手を添え、ビームランプからエメリウム光線を放ち攻撃を続ける。

ビビビビビビビビビビビビビビ!
ヌチャッ!

 続く攻撃も見事にクリーンヒットしたが、やはり効果はなく、体を突きぬけてしまう。
 戸惑うセブンはその場でじりじりと後退し、距離を保つだけ。
 そんなセブンに「今度はこちらから」と言うように攻撃を始める悪魔。
 伸ばした両手から無数のアイスラッガーが飛び出しセブンに襲い掛かる。
 
セブン「なっ・・アイスラッガー?!・・・くそっ・・・コピー能力があるのか!」

 向かってくるアイスラッガーを両手にエネルギーを込めて叩き落していく。
 四方八方から襲ってくるアイスラッガーを払いのけるので精一杯なセブンをただ見ているほどエヌピーは優しくはなかった。
 
セブン「こ、このままでは・・・?!・・あぐっ・・・ぐはぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

ドスッ!
ジャラジャラジャラジャラジャラ
ズダァァァァァァン!

 刃の群れの中央にいる獲物目掛けて鉄球がものすごい速度で襲い掛かった。
 複製された自らの武器に気を取られ迫る鉄球に気がつかず、腹部に一撃を受けてしまったのだ。
 そのまま背後の山肌にまで吹き飛ばされ体が沈みこむほどの衝撃を受けていた。

ヌルヌルヌルヌル・・・

 鎖を伝ってセブンに乗り移ろうとする肉片。
 その異変に気がつき、顔を苦痛に歪めながらもウルトラ念力で肉片を押し戻し、鉄球をエヌピーへと投げ返す。
 フラフラと立ち上がり、深いダメージを追った腹部を庇いながら化け物と対峙したセブンは衝撃を受けた。

ウィィィィィィィン
シュゥゥゥゥゥゥゥ

 伸ばした両手にそれぞれ別なエネルギーが集まり光線技を発射する寸前だったのである。
 体に残るダメージから硬直が続き、避けられないと判断したセブンは咄嗟にバリアを張り防ぐことにした。
 セブンが体を覆い隠す範囲にバリアを張ると、エヌピーの両手からも2本の光が放たれバリアに直撃した。

セブン「こ、これは・・メタリウム光線と・・・スペシウム光線!な、何故っ!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・・ヴヴッ!」
セブン「これ・・以上は・・・耐えられ・・ない・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 バリアで防いでいる光線は兄弟の放つ必殺の光線そのものだった。
 消耗したセブンのバリアは着弾と同時に端が欠け始め、ヒビが入り到底防ぎ続けることは不可能だった。
 そこにエネルギー量を増して放つエヌピーに押し切られバリアは一気に崩壊し、セブンの体に2つの光線が着弾、大爆発を起こしたのだ。
 地面にうつ伏せで倒れるセブン・・・それを見下ろすエヌピー。
 「このままではいけない」それは本能がセブンに何度も知らせていた。
 しかし、2大光線をまともに受けてしまった体は何の命令も受付はしなかった。
 そこへ、エヌピーは肉片をセブンの逞しい両足に付着させ始めたのだ・・・容赦なく。

セブン「な、何をするんだ!」
エヌピー「ヴヴ・・・・ヴヴヴッ!」
セブン「・・?!・・ぎゃぁぁぁぁぁぁっ・・・・ぐっ・・げほっ・・・」

 両足に付着した肉片はウルトラダイナマイトを発動しセブンの両足を再起不能なまでに負傷させた。
 うつ伏せのまま絶叫し、吐血するセブン。
 すでに戦うことはおろか逃げることさえもできない獲物に手を抜く様子のない化け物。
 両腕のブレスレットを長い槍に変え、両手に持った槍で這い蹲るセブンの両手の甲をそれぞれ地面に繋ぎとめてしまったのだ。

セブン「・・?!・・手、手がぁぁぁぁっ・・ぐっ・・ぐわぁぁぁぁぁっ・・・」

 叫ぶセブンの声など耳には入らないらしく、そのままグリグリと槍を押し込め、かなりの深さまで杭を打ち込んだ。
 鍛え上げられたセブンの四肢は完全に破壊され沈黙していた。
 そんな深紅の戦士の顔をエヌピーの強靭な脚が踏みつける。
 セブンの丹精な顔が横を向けられた状態で地面に押し付けられているのだ。

セブン「くそっ・・ま、まだだ・・?!・・な、何が・・・」

 顔を踏みつける足をつたい、肉片がセブンの顔に降り立った。
 ゆっくりゆっくりと脚から顔に流れ落ちる悪魔の体。
 セブンの顔を踏みつける足とは別な脚をストンピングの様に背中に落とし、そこからも肉片を流し込む。
 
セブン「んぶっ・・・んんっ・・・・苦し・・んっ・・・」

 流動する肉片に顔を包まれ言葉も容易には話せない。
 絶体絶命の大ピンチ!
 そんな時、一筋の光がエヌピーに向かって伸びていた!

シャァァァァァァ!
ズドォォォォォォォン!

セブン「・・・?!・・・ぷはっ・・はぁ・・はぁ・・」
ゾフィー「大丈夫か?セブン!」
セブン「はぁ・・はぁ・・・な、なんとか・・・?!・・・」
ゾフィー「・・?!・・・」

 セブンを踏みつける敵をM87光線で吹き飛ばしたウルトラ兄弟長男・ゾフィー。
 敵を殲滅した!早く弟を救出しなければ!
 セブンにゾフィーが近寄りかけた瞬間!
 周囲に飛び散った肉片がいっせいに集まり始めセブンを覆いつくしていく。
 まるでセブンの体が本体であると言わんばかりに・・・。
 ダイナマイトを受けた両足をバタバタ動かし苦しみ、もがき、暴れるが、そんなセブンを何もなかったように肉片は包み込み取り込んでいく。
 次第に、ゾフィーの見ている前で弟の包み込まれた肉片は動かなくなり、蠢きながらあの化け物に戻っていった。
 新たに両腕にアイスラッガーを備え、額にビームランプを出現させて・・・。





ゾフィーが苦戦を強いられ、じりじりと追い詰められているその頃・・・
 
ピコンピコンピコンピコンピコピコピコピコピコ

 エヌピーの最初の犠牲者・ウルトラマンのカラータイマーがひっきりなしに鳴っていた。点滅は激しく、残された命の灯火も僅かになり瞳もランダムに点滅してしまっていた。
 すでに四肢は肉壁に飲み込まれ、残された部分も膜に覆われており端から石化が始まっていたウルトラマン。
 エヌピーがスペシウム光線を使えば使うほど、ウルトラマンを取り込むスピードが加速し、すでに首から上のみがかろうじて膜の中で「生」を維持している状態だった。
 セブンとの戦いで取り込まれた戦士の技の数々が利用され、体を飲み込まれる速度が上がっているのはウルトラマンだけではなかった。
 ジャックの体もすでに膜の下に封じられ、カラータイマーが石化の始まりを告げていた。
 エースとタロウの四肢は完全に壁に飲み込まれ、兄弟2人を封じている膜が彼らにも襲い掛かり、徐々に四肢から侵食を始めていた。
 そこに、新たに加わったセブンは壮絶な戦いのために意識を失っていた。

ジャック「セブン兄さん!兄さん!」
エース「しっかり!兄さん!」
マン「セ・・・ブン・・・・・セブ・・ン・・・・」
セブン「・・・んっ・・・んんっ・・・こ、ここは・・・」
タロウ「よかった・・・目が覚めたんだね」
マン「セブ・・・ン・・・無事・・か?」
セブン「・・・?!・・・ど、どうしたんだ・・・その姿・・・」
ジャック「この化け物に取り込まれて、時間が経つと・・・石にされるようなんだ」
セブン「し、しっかりしろ!今、念力で・・・?!・・・つ、使えない」
タロウ「能力は全ては封じ込まれて奪われてるようなんだ・・・」
マン「あとは・・・た・・・のんだ・・・ぞ・・・・・・」

ピコピコピコピコピコッ・・・・・・

 「あとは頼んだ」
 この言葉を最期にウルトラマンのカラータイマーがついに沈黙してしまった。
 セブンを言葉を交わした時には首が石化し、顔はかろうじて無事だったのだが、エネルギーが底をついた途端、一瞬で石に変えられ、バルタン星人同様に肉の壁に飲み込まれた姿で石へと変えられたウルトラマン。
 ウルトラマンが沈黙した心臓部には重い空気が流れていた。
 そんな中、ジャックの体は石化の恐怖に晒され、エースとタロウは膜に怯え、何も出来なかったセブンは焦燥感に満たされていた。


ゾフィー「くそっ・・全く歯が立たない・・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・」

 目の前で取り込まれたセブンのこと・・・。
 敵の体にある兄弟達を連想するパーツ・・・・。
 
(あの中に兄弟がいる)

 ゾフィーにはその確信があり、なかなか本気で戦えずにいた。
 遊びに飽きたのか、エヌピーは新たな動きを見せる。

ニュキ!ニュキ!
カパッ!

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・
ビリビリビリビリビリリビリリ

ゾフィー「何をするつもりだ・・・?!・・・エ、M87光線!」

 エヌピーの動きの真意に気がつき慌ててフルパワーのM87光線を放つゾフィー。
 淫猥な音と共に背中から現れた2本の腕。
 阿修羅の様に構える4本の腕にエネルギーが渦巻き、集められていく。
 さらに、顔に当たる部分に突然出来た窪みにもエネルギーが収束し始めていた。
 2本の腕からはそれぞれスペシウム光線が・・・。
 もう2本からはストリウム光線とメタリウム光線が・・・。
 そして口からはエメリウム光線が同時に放たれM87光線とぶつかり合いせめぎあう。
 5本の光線が徐々に互いの距離を縮めていくとM87光線は次第に押し返され劣勢になっていく。
 ついに5本のエネルギーが1本にまとまり威力を何倍にも跳ね上げると瞬く間にゾフィー自慢の光線を跳ね除けてしまった。

ズドォォォォォォン
バチバチバチバチバチ・・・・

 ゾフィーもろともに地面ごと吹き飛ばし辺り一面に爆風が吹き荒れる。
 爆心地には動かない影が1つ。

ペタッ・・ペタッ・・ペタッ・・・

 爆風も爆炎も・・・何もないかのようにゾフィーに歩み寄るエヌピー。
 そして、首を鷲掴むとそのまま持ち上げ、もう1本の手を顔に押し当てた。

ゾフィー「んぐっ・・んっ・・はな・・せっ・・・んぐっ・・・」

 押し当てられた手から肉片が顔に張り付き、全頭マスクの様に頭を包み込んでしまった。
 兄弟達の光線技を一斉に浴び、硬直する体では抵抗することも叶わず頭を包みまれ地面に捨てられてしまった。
 視界を奪われる中、何とか立ち上がり気配だけを頼りに拳を振るうゾフィー。

エヌピー「ヴヴヴ・・ヴヴヴヴヴヴ・・・・」
ゾフィー「(ど、どこだ!こ、ここかっ!)」

 その拳はエヌピーを捉えるものの、肉片が纏わりつき、肉団子の様に固められる結果となってしまった。
 さらに、エヌピーは仕上げとばかりにゾフィーの膝下を肉で覆いつくして見せた。

ゾフィー「んんっ?!(な、なんだ!・・ち、力が抜けて・・・いく・・・)」

 両足を包み込まれた途端、突然の脱力に立っていられなくなり敵前であるにも関わらず膝立ちの状態になってしまうゾフィー。
 一度折った膝は伸ばすことが出来ず、膝立ちから脱することが出来ない。

ゾフィー「(早く・・早く立たないと・・・・弟達を助けるまでは・・負けるわけにはいかないんだ!)」

 焦るゾフィーをよそにゆらりと目の前に立つエヌピー。
 その手は獲物の後頭部にかけられゆっくりと、しかし力強く自らの腹部へと引き寄せる動きを始めた。

ゾフィー「んんっ!!(な、なんだ・・・・?!・・・セブンの様に・・・取り込まれてたまるかぁぁぁぁ・・・)」

 必死でエヌピーの体に両手を押し付けて跳ね返そうとするも、肉団子にされた両手はそのまま取り込まれ両腕も頭と同時に吸収され始める。
 どんどん取り込まれていく頭と腕・・・。
 もごもごとゾフィーが動くのも気にもとめず、体内に滑り込ませていく。
 スターマークも肉の海に沈み、上半身が地球人の目に見えなくなるのはあっと言う間だった。
 エヌピーはゾフィーの腰に手を持ち替え、さらに奥へと飲み込んでいく。
 両足をバタバタとするものの膝にまで吸収が及ぶと、めでたく全身を肉に包まれ、セブン同様にエヌピーの糧にされてしまった。





セブン「兄さん・・・兄さん!」
ゾフィー「・・・・っ?!・・・」
タロウ「目が・・さめたんだね・・・」

 ゾフィーは辺りを見回し、愕然とした。
 懸命に救おうとしたウルトラマンとジャックの二人がすでに石化していたのだ。
 さらに、エースとタロウも胸元までが石化しタイマーが激しく点滅を繰り返し、命が残り少しであることを示していたのだ。
 目の前で救うことが出来なかったセブンも全身を半透明のうす汚い膜に包まれ石にされるのを待っている状態だったのだ。

ゾフィー「・・す、すまない・・・私が不甲斐ないばかりに・・・」
セブン「違います・・・こいつは強すぎた・・・」
タロウ「だ、大丈夫!・・・父さんが・・・父さんがきっとやっつけてくれますよ!」
ゾフィー「あぁ、そうだな・・・きっと・・・・」

 兄弟の思いを知ってか知らずか、次の目的地は光の国になったようだった。
 次元移動ではなく、進路にいる宇宙人・怪獣を吸収しながら光の国を目指すエヌピー。
 次元移動しないのは残されたエース・タロウ、セブン、ゾフィーの技を意図的に利用し、吸収スピードを上げるための時間でもあるようだった。
 
 体内ではエヌピーの狙い通り、残された4戦士が苦痛に悶え続けていた。
 
エース「ど、どうして・・まだ、時間はあったはず・・・なのに・・・」
セブン「エース!タロウ!しっかりしろ!」
タロウ「き、きっと・・・こいつが僕達の技を乱発しているんです・・くっ・・はぁ・・・はぁ・・・・・」
ゾフィー「気をしっかり持て!エネルギーなら今、わけてやるから!ムンっ!」

 ゾフィーがカラータイマーから二人に向けて光を放つも自身が包まれている膜に全て吸収され、自らの石化が進行するだけだった。

エース「兄さんたち・・・あとを・・・たのみ・・ま・・・す・・」
タロウ「役に・・たてなくて・・・・・ごめん・・なさ・・・い・・」

フワァァァァァァッ・・・

 二人の石化はウルトラマンやジャックとは異質なものだった。
 二人は自然にエネルギーが底をついて石に変えられたのだが、エースとタロウは強制的にエネルギーを奪い尽くされたため、タイマーの音も点滅も追いつかないほどの早さでゾフィーとセブンを残し自らを墓標に変えたのだ。
 残された2人にも時間はそう残されていなかった。

セブン「に、兄さん・・私もそろそろ・・・・」
ゾフィー「セブン!何を言う!諦めるな!」
セブン「す・・いませ・・・・・・・」

ビシッ!

 体内にあと、どれだけの獲物が残されているのか・・それがエヌピーにはわかっているようだった。
 4人だった時には満遍なく使用していた兄弟達の技も、今や2人。
 そのエネルギー奪取率は2倍!
 セブンもまたゾフィーの前で最期の言葉さえも言えずに冷たい石へと姿を変えた。
 残るは・・・ゾフィー1人だけ。
 タイマーは未だ点滅せず、全身が膜に覆われているだけだった・・・。

ピコンピコンピコンピコピコピコピコピコピコ

ゾフィー「?!・・は、早すぎる・・・くっ・・くはっ・・・んぐっ・・・・」

ミシッ!ミシミシ!
ビキッ!ビキビキビキ!

 音を立てて周辺から石化していく自らの体。
 ものの数秒でタイマーは瀕死状態を示し、首元まで石化の波が押し寄せる。

ゾフィー「ここ・・・まで・・・・か・・・・・」

 独り最後に残されたゾフィーは諦めの言葉をこの世の最後の言葉にして兄弟と同じ石版にされたのだった。
 エヌピーは当初の目的どおり、ウルトラ6兄弟を体内に捕らえ、能力を奪うことに成功したのだった。

absorption 4話

4話

 少しずつ敵の正体がわかり始めてきた・・・・。
 バルタンが生み出そうとした生物兵器であるエヌピー。
 しかし、その生誕はトラブルによるものでバルタンの怨念が宿った融合生物となりウルトラマンに続き、ジャックまでも体内に取り込み力をつけてしまった。
 徐々に知能も増し、目的をもって獲物を取り込み始めたのだ。
 そして・・・

ヌゥゥゥゥゥゥゥッ・・・

 次元の隙間から滑り出した白い怪物。
 そこにいた次なる標的はエースとタロウだった。
 
エース「なっ・・今、どうやって」
タロウ「まさか?!超獣?!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・・・」

 二人が困惑するがたを楽しんでいるかのように奇声を発し、姿を消してしまったのだ・・・・手に入れたての能力を使って。

タロウ「ど、どこにいった?!」
エース「消えた?!」
タロウ「いったい・・・どこに?!・・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁ・・」
エース「タロウ?!」

 透明になった怪物は至近距離から狙いを定め、両手に装着したブレスレットから半月状の高エネルギー弾をタロウの足元に着弾させたのだ。
 その爆発でタロウは後方に吹き飛ばされてしまった。
 残されたエースを獲物の品定めでもするように見つめるエヌピー。

ヌラァァァァァァァ
 
エース「そこにいたのか?!覚悟しろ!」
 
 両腕を胸の前でクロスさせ、伸ばしたかと思うとカラータイマーから光線を放ち、姿を現したエヌピーを攻撃する。
 以前のエヌピーとは違い、攻撃をよける意識を身に着けていた。
 
エース「意外にすばしっこいやつだな!だが・・・そこだっ!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴ」

 隙をついたエースのタイマーショット・・それは怪物に命中するはずだった。
 しかし、予想外の出来事が起こる。
 エヌピーが同じ動きをしており、胸に光るタイマーから紫色の光線が放たれ本家タイマーショットとぶつかり拮抗しているのだ。

エース「こいつ・・・まさか?!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴっ・・ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ」

 エースとエヌピーの違いがあった。
 それは内在エネルギーや能力以外に1つ・・・タイマーの数が違うのだ。
 怪物の力強い声と共に2つのタイマーは怪しく光りニセの光線技が本家を超え始めたのだ。
 徐々に徐々に紫色の光線がタイマーショットを押し返し始めた。
 じりじりと、しかし確実に・・・。

エース「くっ・・くそっ・・・」

 あわや、光線がエースをしとめる!そんな寸前のところで高く飛び上がり窮地を脱するエース。
 さらに、その高さから急降下で勢いを増した蹴りを見舞う!
 数々の獲物を取り込み体が筋肉質になってきているエヌピーのボディが流動的であることなどエースにはわかるはずもなかった。

エース「(光線発射の硬直中の今ならば!)」

 ダークタイマーショットの発射直後を目掛けてエースの鋭いキックが直撃する。

エヌピー「ヴヴッ!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・」
エース「・・?!・・な、なんだ、その体は・・」

 体の中心部分に命中したエース渾身の一撃は体をすり抜け、逆にエースの体が腰元でロックされるという結果になってしまった。
 エヌピーの体に刺さるようにしてエースの体が交差している。
 怪物の背中側からはエヌピーの肉に包まれたエースの逞しい両足が飛び出しているのだ。

ズブ・・ズブズブ・・・・

 徐々に沈み始める体。
 とっさに全身にメタリウムエネルギーを巡らせ怪物の底なし沼のような体から逃れるエース。
 両足の肉片は外れる気配はなく、腰から下を魔の肉片に覆いつくされながらフラフラと立ち、エヌピーと対峙する。

エース「肉弾戦もダメ・・光線技も・・・・?!・・・ある・・1つだけ!」

 全身発光を受け崩れていた体を元に戻しエースに襲いかかろうとした瞬間。

エース「(カウンターする前に倒せばいいんだ!)ヴァーチカル・ギロチン!」

 巨大な光の刃がエヌピーに襲い掛かり、あの流動的な体を真っ二つにしていく。

エヌピー「ヴヴッ・・ヴッ・・・」

 途切れた声に合わせて両側に割れた体が倒れていく。
 ピクピクと痙攣する敵の体

エース「はぁ・・はぁ・・・くらえぇぇっ・・・メタリウム・光線!」

 息のあがった体で大きく振りかぶったLの腕から虹色の光線が放たれ、地面に転がるエヌピーの体を破壊していく。
 光線が命中すると粉々にはじけ飛び、原型を保っていなかった。

エース「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・・」

 両足の感覚が徐々になくなってきており、エネルギーの大量消費もあって地面に四つんばいになり呼吸をするのが精一杯の状況にまで追い詰められていた。
 
ネチャネチャネチャ・・・
・・・グニョグニョグニョ

 全くその場から動けないエースの背後で再生していくエヌピーの体。
 しかし、その事実に気がつく余裕のないエースは敵の前から動くことが出来ずにいた。
 瞬く間に体を元通りにしたエヌピーは腕を大きく振りかぶり、必殺光線のお返しとばかりにメタリウム光線発射のポーズをみせていた。

タロウ「兄さん、危ない!」

 全身に炎を纏い絶体絶命のピンチに陥ったエースを救うべく、ウルトラダイナマイトを怪物目掛けて放つタロウ。
 炎に包まれたタロウが接触すると白い怪物は大爆発し粉微塵に消し飛ばされた。
 自らの体も吹き飛ぶこの大技・・・即座に再生を始めるタロウ。

エース「(あの化け物・・まだ生きていたのか・・・・)」

 徐々に整ってきた呼吸に周りを見る余裕が出てきたエース。
 自分を助けてくれたタロウを見やると、そこには衝撃の光景が広がっていた。
 ダイナマイトからの復活をしてるタロウを飲み込むもうとエヌピーの体が覆いかぶさろうとしているのだ。 
 あれにタロウが襲われることは絶対に阻止しないといけない!
 エースの本能がそれを告げていた。
 両足の感覚がなくなっている状態だったはずが、今出せる最大の速度で走りより、力いっぱいタロウを突き飛ばした。

エース「危ない!タロウ・・」
タロウ「んぐわぁぁっ・・・?!・・・兄さん!」

 肉の波が迫り、今にもタロウを飲み込もうとした瞬間、危機一髪のタイミングでタロウを突き飛ばすことに成功したエース。
 しかし、その代わりに自らの体を生贄にささげる羽目になってしまったのだ。
 ヘッドスライディングの要領でタロウを突き飛ばしたまま、波が押し寄せる場所にうつ伏せで倒れこんだエースに悪魔の肉が覆いかぶさる。
 家族同然に育った兄が敵の体に飲み込まれるのは・・・一瞬の出来事だった。

タロウ「兄さん!兄さん!待ってて、今引っ張り出してあげる!」
エース「だめ・・・はな・・ろっ・・・・にげ・・ろ! んんんんっ・・」
タロウ「なっ・・・・そ、そんな・・・」

 もがく肉の塊からエースの腕が伸び、肉にまみれてはいるものの「来てはいけない!」というジェスチャーでタロウを静止する。
 その腕を見て、動きを止めるタロウ。
 しかし、そのタロウの前で腕は力なく引き戻されていき、全体がモゴモゴと動くだけでエースが抜け出せる気配は全くなかった。
 そして、徐々にその抵抗もなくなり声も聞こえなくなり、ついには動かなくなってしまったのだ。

タロウ「兄・・・・さん・・・・」

 徐々に人型を成形していくエヌピー。
 その胸には3つめのタイマーが輝き、頭部にはウルトラホールが現れた。

タロウ「飲み込んだ相手の特徴が・・・?!・・・ということは、他に2人、ウルトラ戦士が被害にあっているというのか!」

 皮肉にもエースが犠牲になったことでわかった事実はタロウを大いに動揺させ、混乱に陥れるには十分なものだった。
 敵を前に動きを止めたタロウにエヌピーが肉片をいくつか投げつけ、タロウを肉片にまみれさせて見せた。

タロウ「しまった・・・くそっ、とれないぞ・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・ヴッ!」
タロウ「・・?!・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・がぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

 エヌピーの合図でタロウの体に付着した肉片がそれぞれ大爆発を起こし始めたのだ。
 それは皮肉にも爆発の餌食になっているタロウの必殺技がコピーされたものだった。
 爆発を起こした肉片はさらに細かくなり再びタロウの体に付着していた。
 その小さな肉片も爆発を起こし、連鎖しながら獲物を絶えず起こり続ける爆発の中心に閉じ込めていた。
 体がボロ雑巾のように前後左右に爆発で翻弄され倒れることさえも許してもらえないのだ。
 不滅の体だからこそ出来る技だった。
 
ズダアァァァァァン

 ようやくタロウが地面に倒れることが出来たのは、肉片が爆発を起こせないほどの小ささになってからのことだった。
 全身に大火傷を負い、うつ伏せでプルプルと痙攣するタロウ。
 そんなタロウに容赦するほど優しい敵ではなく、メタリウム光線を放ち爆発で宙を舞う獲物をブレスレットの光輪で縛り上げ、空中に直立させたまま固定してしまったのだ。

タロウ「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」

 光輪の強烈な締め上げに悶絶の声を上げる。
 手足をバタバタさせ苦しむが、拘束が解除される気配はない。
 苦しむタロウを他所に、胸の前で両手をすり合わせるようにするエヌピー。その隙間からエヌピーの体が水の様にタロウに吹きかけられる。
 腹部に命中する肉の流れは体を這うように広がり下半身は瞬く間に肉に包まれ、重力を無視し上半身も肉に包まれてしまうのだった。

タロウ「(今、あの爆発を起こされたら・・・死んでしまう)」

 爆発されるまでに逃げなくてはならない・・。
 そうは思っても体が動かず、反撃どころか逃げることさえも出来ない。
 焦るタロウにどんどん浴びせられる肉片・・・。
 顔を横に振り乱し抵抗を試みるが、何の効果もなかった。
 打開策が見出せぬまま、エヌピー本体がついにいなくなり、全てがタロウの元に集まってしまった。
 直立した肉の柱にタロウの顔だけが存在している・・・そんな光景だった。
 
タロウ「あうぅ・・・・・」

 突然、ブレスレットの拘束が解け、ヨタヨタと解放される。
 しかし、肉片に包まれたまま時間がかなり経っており体の感覚はなく立つことさえできなくなっていたのだ。
 肉の柱と化したタロウはそのまま地面にうつ伏せの姿勢で倒れこみ痙攣を始めた。
 唯一無事だった顔や頭も地面に倒れたあと、体から移動してきた肉片に飲み込まれていき、霞む視界に最期の光景を刻み込み完全に取り込まれてしまったのだった。
 エースとは違い抵抗することも出来ず、飲み込まれたタロウ。
 すぐさま、元の姿に戻ったエヌピー。
 その胸には4つ目のタイマーが光り、頭部にはウルトラホーンが2本現れていた。


 その頃、エヌピーの体内では・・・・・。

ジャック「エース!エース!しっかりしろ!」
マン「おい、タロウ!起きるんだ!」
エース「・・・んっ・・・こ、ここは・・・・」
タロウ「生きて・・いる?!・・・」
ジャック「ようやく目が覚めたか」
マン「心配したんだぞ・・・」
エース「兄さん・・その姿は一体・・・」

 目を覚ましたエースとタロウ。
 二人もやはり四肢が肉の壁に飲み込まれており、繋ぎとめられた格好になっている。
 体内にウルトラ戦士が飲み込まれていることを悟っていた2人は自らの姿にそこまでの動揺はなかった。
 しかし、彼らが驚いたのはウルトラマンの姿だった。
 四肢の付け根までが飲み込まれているジャックの姿はいずれ自分達がなるであろう姿として違和感はなかったが、ウルトラマンのそれは予想もしない光景だったのだ。
 ジャック同様に四肢の付け根までが肉の壁に飲み込まれているのだが、肉の壁にかろうじて取り込まれていない体にも半透明の膜が覆いかぶさっており、無事な部分はどこにもなかったのだ。
 濁ったゲル状の膜に覆われているウルトラマンの横には石化したバルタン星人の姿も見て取れた。

エース「兄さん達、大丈夫ですか?」
ジャック「あぁ、今のところはな・・・」
タロウ「今のところは・・って・・・」
マン「俺はまもなくこのバルタンと同じ状態になってしまうんだ」
エース「そ、そんな・・・・」

 よく見ると、ジャックの体にも膜は忍び寄っており、腹部はもうゲル膜に覆われていた。
 事態を説明し終わった時、ついに恐れていたことがおき始めてしまった。

ピコン・・・・ピコン・・・・ピコン・・・・・
・・・パキキッ・・・・パキ・・・

 突然、なり始めたウルトラマンのカラータイマー。
 その音に連動してウルトラマンを覆う膜が石化を始めたのである。
 
マン「ついに始まってしまったのか・・・」
ジャック「兄さん、諦めないで!」
エース「な、何か・・何か方法は・・・」

 焦る3人をあざ笑うようにゆっくりになっていくタイマーの警告音と勢いを増す石化の波。
 自分達もいずれ・・・・そんな思いが3人の脳裏をよぎり、体が冷えていく想いだった。

 さらに事態は悪化するばかり。
 ウルトラマンが石に変えられようとしている最中、心臓が慌しくうごめき始めた。
 その動きを見守る4人は現れた犠牲者を見て絶句してしまうのだった。

マン「あ、あれは・・」
エース「間違いありません」
ジャック「ベムスターと・・・」
タロウ「タイラントです・・・・」

 エヌピーが狙った獲物・・・それはベムスターとタイラントの2体だったのだ。
 ベムスターが吸収されたことで体の防御力が上がるだけではなく、光線技を吸収した上でカウンターできるようになってしまったのだ。
 さらに、融合体であるタイラントを吸収することは能力が飛躍的に上昇することを意味していた。
 今のままでも歯が立たず、4人はこうして囚われの身に成り下がっているというのに・・・・。
 そんな絶望がたち込め始めた。

absorption 3話

3話

 バルタンの生み出した融合生物「エヌピー」
 実験室を飛び出し、次元を滑るように移動し最初の目的「ウルトラマン」の元に現れた。
 「オマエモ・・・イッショニ・・・・」謎の言葉を放ち、その言葉通りにウルトラマンを自らの体で包み込み、体内へと飲み込んでしまったのだ。
 そして、真っ白だった体にカラータイマーが現れ、体に幾分か筋肉がついたようにも見えた。
 しばらくは月面に立ち尽くし、動きのなかったエヌピーだったが、不意に動き出したかと思うと次元に滑り込むように入り込みどこへともなく消えてしまった・・・体内に飲み込んだウルトラマンと共に・・・。

 その頃、火星周辺をパトロールしていたウルトラマンジャック。
 彼もまたウルトラマン同様に宇宙の平和の維持のために尽力していたのだ。
 火星に降り立ち一休みをしていたところだった。
 不意に感じた違和感に注意を向けていたところ・・・・・

ヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・

ジャック「・・?!・・な、なんだ!」
エヌピー「ヴヴヴヴ・・ジャック・・・・オマエモ・・・・・」
ジャック「何?どういうことだ?」

 以前よりも知能が増したのか、ジャックに話しかけ勢いをつけて走っていく。
 その移動の仕方も徐々に無駄のない動きになりつつあった。

ジャック「何者かわからないが、挑んでくるのなら問答無用!これをくらえ!!」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴ・・・・・・」
 
 ジャックの言葉にも耳を貸さず突進し続ける白の化け物。
 
ジャック「ストップ光線!」

 両手の間から放たれた光がエヌピーに命中する!
 その瞬間、わき目も振らずに進んでいたエヌピーの体が停止したのだ。

ジャック「よし、今がチャンス!・・・?!・・・・」

 ストップ光線で狙い通りにエヌピーの動きを止め、攻撃に移ろうと思った瞬間、思わぬ反撃を受けてしまったのだ。
 
ジャック「(体が・・・動かない・・・・?!・・・これは・・ストップ光線なのか)」

 本来、動きの止まった敵が反撃できるはずがなかった。
 光線が命中したことで油断したのかもしれない。
 エヌピーがカウンターで放ったストップ光線をまともに受けてしまったのだ。

ジャック「・・・・・?!・・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・・・・」
エヌピー「・・・・・・・・・・・・・・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・・」

 カウンターとは言え、未熟なストップ光線だったため、一瞬早くジャックの方が硬直から解放されていた。
 肩で息をしながらも、距離をとるジャック。
 カウンターで放った光線の効果を悟ったエヌピーはうなり声を上げながらストップ光線を全身のいたるところから光弾として放ち始めた。
 ジャックは光線をよけるのが必死で反撃の余地などなかった。
 そんな戦いも長くは続かず、光線がついにジャックの体にも着弾し始めてしまった。

ジャック「しまっ・・・・(まずい・・・一方的に動きを止められてしまった)」

 着弾してからは一定間隔でストップ光線が放たれジャックは動きを止められ続けた。
 未熟なストップ光線でも十分な脅威となった瞬間だった。

ジャック「(このままでは・・・エネルギーがもたない・・・・)」

 そんな死の予感が頭をよぎったジャックの目の前でエヌピーは予想外な動きをし始めた。
 両腕をクロスさせて体を回転させ始めたのだ。
 そう・・・ウルトラマンが得意とする技にそっくりな動きをしているのだ。

ジャック「(何故、あいつがキャッチリングを?!)」

 未だ動かない体で目の前の現象に困惑してしまう。
 回転する白い化け物の体の回りには光とは違う輪が3つ生じふわふわと浮かんでいる。
 そして、輪が空中に投げ出されるとジャックの体に狙いを定めたかのようにゆっくりと下降してくる。
 
ジャック「・・・・・くはぁっ・・はぁ・・・はぁ・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・ヴッ!」
ジャック「・・?!・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・くる・・し・・いっ・・・・」
 
 リングが3本共ジャックの周囲を浮遊したところでストップ光線の効果が切れた。
 しかし、時はすでに遅く、ジャックの体はリングの効果範囲に封じられていた。
 エヌピーの掛け声に合わせて光速で絞まるリング。
 ジャックは両手を体に沿わせ、両膝、腹部、両肘の部分で拘束されてしまった。
 その締め上げる力は相当なもので、骨が軋む音が今にも聞こえそうなほどだった。

ジャック「んぐわぁぁぁぁぁぁっ・・・ぐっ・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・ジャック・・・・オマエモ・・・イッショ・・・」
ジャック「お前・・・も・・だとっ・・・・・がぁぁぁっ・・・・どういう・・・ことだ・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・・」

 ジャックの体を締め上げるリングはエヌピーの肉片で出来ていた。
 その忌まわしきリングは締め上げると同時に体に付着し、広がり始めていた。
 徐々に徐々にジャックの体を侵食し、3箇所の拘束箇所から表面を包み込んでいく。
 空中に浮かびモゴモゴともがくことしか出来ないジャックの体は瞬く間に肉片に覆い尽くされウルトラマンの時と同じ悪夢が再現されようとしていた・・・。
 エヌピーの前には顔だけが残されたジャックが悶絶を続けているのだ。

ジャック「か、体が・・・ぐっ・・・ぐわぁぁぁぁっ・・・・」

 表面は肉片に覆われているものの、その皮下では締め付けが尚も続いておりジャックには地獄の時間だった。
 そして、その悲鳴をBGMにしてゆらりゆらりと歩み寄るエヌピー。
 あまりのダメージに瞳が明滅するジャック・・・そして、ついに最期の時が訪れた。
 苦しむ光の国の戦士の頬を優しく包み、口付けをするエヌピー。
 その接触した口を介して肉片が獲物の顔を多い尽くしていく。

ジャック「んごっ・・んんっ・・・んっ・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・」

 消耗しきった体では抵抗する力も残っておらず、容易く手中に収められてしまう光の戦士。
 そして、完全な肉の塊になり蠢いたかと思うと、再び人の形をとったエヌピー。
 その胸にはタイマーが2つ輝いていた。
 体つきは確実に筋肉が増していき、両手首には金色に輝くブレスレットが装着されていた。

 
 その頃・・・・
 
聞きなれた声「・・ック・・・ジャック・・・・ジャック!しっかりしろ!」
ジャック「・・・んっ・・・んんっ・・・・」
聞きなれた声「ジャック?!・・・よかった・・目が覚めたか・・・」
ジャック「こ、ここは・・・?!・・・・兄さん、その姿は・・一体・・・」

 兄弟の必殺技に苦しめられつい先ほど、謎の敵に飲み込まれてしまったばかりだった。
 聞きなれた声に呼び覚まされ、意識を失っていたジャックは目を覚ました。
 ジャックが目にしたのは驚愕の光景だった。

ジャック「こ、これは・・・一体・・・・・」
マン「ここはあの化け物の体内だ・・・」
ジャック「・・では、わたしたちはやはり取り込まれてしまったのですね」
マン「あぁ・・・名前はエヌピーと言うらしい」
ジャック「どこでそれを?」
マン「そこを見るんだ・・・」
ジャック「こ、これは・・・バルタン星人?!・・・」
マン「あぁ・・1人目の被害者、そしてエヌピーの生みの親だそうだ」
ジャック「そ、そんな・・・くそっ、とれない!」

 敵の名前、自分が置かれた状況・・・ウルトラマンから話を聞きながら少しずつ冷静になっていくジャック。
 手足が肉の壁に飲み込まれており引き抜こうにも一体化でもしたかのように抜ける気配がない。肉の壁が柔らかいため、引っ張ると多少は動くものの、そのまま引き戻されてしまう。
 ジャックにはまだ四肢にも残された部分があるのだが、隣にいるウルトラマンは腕や脚の付け根までが肉の壁に埋没し動かすことが出来るのは首から上だけであった。
 脈動する不気味な空間には奥にある巨大な塊と石版の様にされたバルタン星人、そして捕まったウルトラマンとジャックだけが存在していた。
 奥で脈動する肉の塊は壁とは違い一際激しく動いており、そこにはどこかで見たような記憶のかなたにある・・そんなものが見え隠れしていた。

マン「バルタンはブルトン、アメーザ、イフの3つを融合し、生物兵器を作るつもりだったようだ」
ジャック「・・・?!・・・じゃあ、まさかのあの塊・・・」
マン「あぁ、どうやら怪獣たちはあそこで一塊になっているようだ」
ジャック「な、何故、わたしたちはここに・・・?」
マン「それは、バルタン・・こいつの執念が原因だろう・・・おまえも聞いただろう?」
ジャック「・・・?!・・・オマエモ・・イッショ・・・あれはそういう意味なのか!」
マン「あぁ・・・そして、バルタンは全ての真相を話し、この姿になったんだ」
ジャック「くそっ・・・なんとかここを脱出しないと・・」

 二人が脱出のために頭を悩ませている頃、エヌピーは確実増えつつある頭脳で次の獲物を狩に行く前に必要な「物」を取りにいっていた。
 ウルトラ戦士でさえも簡単に取り込める彼に狙われた獲物は逃げることは出来なかった。
 あるものは栄養分として・・・あるものは丈夫な体を狙われ・・・・そして・・・・。

マン「・・・?!・・・な、なんだ・・」
ジャック「心臓部が蠢いている・・・」
マン「あ、あれは・・・」
ジャック「サータン?!・・・」

 エヌピーは能力を奪うために特殊な怪獣たちもターゲットにしているようだった。
 ジャックと戦ったこともあるサータンには体を透明にする能力がある。
 地球で戦った時にはジャックも苦戦を強いられた能力の1つであり、それが今、エヌピーの物になってしまうことが二人には恐怖だった。

ジャック「この上・・姿まで見えなくなるのか・・・・」
マン「な、なんとかしてセブンたちに知らせないと・・」

 蠢く心臓の機能を担う肉の塊にサータンが加わり、より禍々しく・より強力な脈動を始めた。
 この空間で変化が訪れたのは心臓だけではなかった。

ジャック「なっ・・・兄さん、そ、それは・・・?!」
マン「・・・最初はジャック・・お前の様に四肢の一部だけ・・・そして」
ジャック「・・?!・・・くそっ、飲み込まれていっているのか・・」
マン「付け根まで取り込まれると、今度は薄い膜が侵食してくるんだ」
ジャック「・・・?・・・」
マン「そして、膜が体の全てを覆い尽くすと・・・」
ジャック「ま、まさか・・・」
マン「あぁ・・・バルタンのように石化してしまう仕組みのようだ」
ジャック「ま、まだ時間はあります!諦めないで打開策を見出しましょう!」
マン「そ、そうだな・・・」

 不安と恐怖に瞳の光に陰りが見えるウルトラマンを必死に励ますジャック。
 しかし、そんなジャックも四肢の付け根が飲み込まれつつあり、確実に石化への末路を辿っていることに焦りを感じていた。
 バルタンが石になる瞬間を見ていたウルトラマンの心は恐怖に染められ、心は暗く沈み始めていた。精神状態に反応してなのか、肉の壁から出ているウルトラマンの四肢の末端から徐々に半透明な膜が体を覆い始めていた。ゆっくり舐めるようにじっくりと・・・。

absorption 2話

2話
 バルタンの実験により生を受けた「エヌピー」。
 アメーザとブルトン、それにイフの融合生物である。
 その姿は人型ではあるものの、全身が白いだけで何の起伏もない姿。
 世に和をもたらす存在なのか、破滅を導く存在なのか・・・・それは誰にもわからなかった。
 
 実験室から突然消えたエヌピーはバルタン星人のサンプル倉庫から1体だけ、サンプルを奪い姿を消していた・・・。


 場所は変わって地球の衛星・月の近く。
 宇宙の平和を維持するため、パトロールをしているウルトラマン。
 彼が月面に降り立ち地球を眺めていると事件は起きた。
 その瞬間は平和に輝く青い星の眺める穏やかな時を破り訪れた。


バリバリ・・・バリバリ・・・ガシャァァァァァァン

マン「な、何っ?!バキシムか!・・・・?!・・・な、なんだ、お前は・・・!」
エヌピー「・・・・・」

 空間を割り現れた白い人型生物。
 その出現方法はバキシムそのものだった。
 ウルトラマンがバキシムかと身構えるのも無理はなかったことだったが、現れたのは彼の予想に反し見たこともない生物だった。

エヌピー「・・ヴヴ・・・ヴヴヴヴヴ・・・・・・」
マン「・・?!・・・くそっ、正体がわからないが、向かってくるなら容赦はしないぞ!」

 うなり声をあげながらウルトラマンに向かって謎の生物が突進してくる。
 敵なのか味方なのかを見極めたいと考えていたが、友好的ではないことがわかり、渋々戦闘態勢に移行していく。
 片膝をつき必殺の八つ裂き光輪を放つ!
 今まで幾多の敵を倒してきた自慢の技の1つだ。

エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・・・?!・・・・ヴ?・・・・・」
マン「よしっ!・・・・?!・・・な、なにっ?!・・・・」

 わき目も振らず向かってくる生物にクリーンヒットした光の刃。
 体を真っ二つにした・・・かに見えたのだが、体を切り裂いたそばから切断箇所が再生し再融合してしまったのだ。
 目の前にいるのは幻影などはでなく間違いなく本体・・・効果がないのだ。
 そればかりか・・・・

エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・・・!」
マン「・・?!・・・っ・・・くそっ、こいつ、まさか、カウンターをしてくるのか?」

 体が再生した直後、首をかしげたかと思うと、2本の手から別々に八つ裂き光輪が放たれウルトラマンを襲っていく。
 しかし、その狙いは甘く、避けることは難しくはなかったのだが、攻撃がカウンターされる・・・その可能性が次なる手を牽制していた。

マン「スペシウム光線は使えない・・・肉弾戦しか・・・ないのか?」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴ・・・・ウル・・・トラ・・・マン・・・」
マン「・・?!・・・私の名前を?・・何故・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴ・・・・・・」

 八つ裂き光輪の乱れうちを止め、1度だけウルトラマンの名前を呼び動きを止める。
 名前を呼ばれたことで動揺するウルトラマン。
 動きを止めた獲物とは対称的により激しく動き始める白い化け物。
 体中のいたるところから自らの肉片を飛ばし始める。

マン「な、なんだ・・これは・・・くそっ、避けきれない・・・」

 両手で顔をガードしつつ迫り来る肉片を避けようとするが手数が多いために数発、体にヒットしていく。
 脚に腕に胸に・・・場所を選ばずに確実に着弾していく肉片。
 体に着弾すると意思があるように張り付いて流れ落ちることも吹き飛ぶこともなかった。

マン「くそっ・・・こ、このままではまずいな・・・」

 徐々に体の動きが鈍くなっていくウルトラマン。
 肉片に包まれ始めた場所の感覚が薄れ、なくなっていくのがわかった。
 これを一種の毒と考えたウルトラマンは打開策を考えながらガードを続けていく・・・。
 
マン「はぁ・・はぁ・・・ど、どういうことだ・・・毒は防いでいたはずなのに・・・・か、体が・・・・」

 体にエネルギーを漲らせ外部からの毒の侵入を防御していたはずだった。
 しかし、瞬く間に体の自由が利かなくなってしまったのである。
 両膝をつき、両手をつき・・・肉片にまみれ、顔以外が白い塊に覆われつくした体を前後させ呼吸が荒くなるウルトラマン。
 ウルトラマンに命中しなかった肉片が本体に還り、幾分か細くなってしまったがゆらりゆらりと動けなくなった獲物の元へと近づいてくる。

マン「(ウルトラサインも出せない・・・・万事休すか・・・)」
エヌピー「ヴヴヴヴヴ・・・ウル・・・トラ・・・マン・・・・オマエモ・・・・イッショニ」
マン「・・?!・・・だ、誰だ、お前は・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・」

 謎のメッセージを言い放つとその両手で優しくウルトラマンの両頬を包み込む。
 その腕からは液体が流れるように頬から顔へと肉片が流れ込み、顔を包んでいく。

マン「うっ・・んぐっ・・やめ・・・ろっ・・・やめる・・・んだ・・・・・・んぐぐぐっ・・・」
エヌピー「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・」
マン「んんっ・・・んっ・・・・・・んっ・・・・っ・・・・・・」

 顔が覆われ、全身が肉片に覆われてからしばらくの間は最後まで諦めずに抵抗していたウルトラマンだったが、次第に動きが弱まり、ついには動かなくなってしまった。
 動かないウルトラマンを抱きしめるようにエヌピーが覆いかぶさると体が融合し1つになっていく。
 再び人型に戻ると、その胸にはカラータイマーが1つ輝いていた。
プロフィール

いぬいbまさる

Author:いぬいbまさる
どうも!いぬいBまさるです。
詳しいストライクゾーンなどは「敗北の味は密の味」にて

ここでは小説を掲載していこうと考えています。
図書館みたいになるといいなぁ~♪

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