敗北の文字の味も密の味

タイトル：小ダダ物語　怪獣レシピ　空編

　ここは宇宙の果て・・辺境の惑星にあるのどかな村。
　どこもかしこも縞々模様の宇宙人：ダダが住む平和な星。
　
　そんな平和な星の子供達の間で流行っているゲーム「ウルトラ戦士バトル　ダダコロシアム」。
　小ダダも一生懸命にお小遣いを貯め、考えに考え抜いた怪獣のミックスを試しましたが、予想外な結果に終わっていたのでした。
　ダダおじいちゃんに相談したところ、優しいおじいちゃんは何百年かぶりに徹夜して小ダダにつきあい、ベストなミックスレシピを考えだしました。
　今日もそんな長い長い二人のレシピ会議を覗いてみましょう。


ダダおじいちゃん：じゃあ、次のにとりかかろう・・メモの準備はいいかい？
小ダダ：うん、ばっちり。
ダダおじいちゃん：海の次は空を考えてみようか
小ダダ：空・・・ってことは飛べる怪獣だね？
ダダおじいちゃん：そうさねぇ・・思いつくのはいるかい？
小ダダ：うん、いるよ

　
　ダダおじいちゃんが予想したとおり、ここでも「存在する空の怪獣の一覧」を「思いつく」小ダダでした。
　コンピューターの様に過去に報告されている空の怪獣を書き倒す小ダダ。
　しかし、その手が「ハッ！」と止まりました。
　

小ダダ：強い！って思うやつだけ書くんだったね？間違えちゃったｗ
ダダおじいちゃん：気にしないでいいんだよ・・・どれが強いと思うんだい？

　
　海の怪獣の時のやりとりが活かされていることに喜ぶダダおじいちゃん。
　そんなおじいちゃんの目の前で書き出されたのはまたしても５匹の怪獣でした。
　バードン、テロチルス、ベムスター、アリゲラ、シルバーブルーメの５つでした。　


ダダおじいちゃん：ふむふむ・・・なるほどのぉ・・・・ここからさらに選んでみようか？小ダダや
小ダダ：う～ん・・・バードンとベムスターとアリゲラかなぁ・・・
ダダおじいちゃん：ふむふむ・・・
小ダダ：強くないかなぁ？
ダダおじいちゃん：いや、さっきとは違っていいんじゃないかのぉ？
小ダダ：おじいちゃんならどうするの？
ダダおじいちゃん：おじいちゃんなら・・アリゲラをベースに、バードンとテロチルスを加えるのぉ
小ダダ：あっ！やっぱり？僕もベムスターとテロチルスで迷ったんだぁ
ダダおじいちゃん：そうかそうか・・・ベムスターももちろん強いんだが、こやつは空中戦よりも地上戦の方が強いかもしれんのぉ
小ダダ：なるほどねぇ
ダダおじいちゃん：ベムスターにシルバーブルーメとボガールを足しても面白いかもしれないなぁ
小ダダ：食費が大変だねｗｗｗ
ダダおじいちゃん：今回は空中での機動力を考えたんだね？
小ダダ：そうなんだ！おじいちゃんからさっき習ったことを考えて、空中での早さならアリゲラかなぁって思ったの
ダダおじいちゃん：なるほどのぉ、そこに空中戦も強いバードンを加えたんだね？
小ダダ：そうなんだぁ・・・ねぇ、このおじいちゃんの考えたものだったらどういう風になるの？
ダダおじいちゃん：そうさねぇ・・・これだと・・・


　ダダおじいちゃん作：アリゲラIIがウルトラマンジャックと戦ったら
　
　舞台は市街地上空。
　澄み渡った空、地上ではたくさんの人が暮らしています。
　そんな中、突如として現れたアリゲラIIを倒すため、ウルトラマンジャックが現れました。


ジャック：い、一体、あいつはなんなんだ？

　今までに退治してきた怪獣にはない高速移動に驚くジャック。
　それもそのはず、アリゲラIIは光の国の戦士でさえもおいつくのがやっとの速度で空中を飛行し止める者のいない空を我が物顔で飛び回っているのでした。

アリゲラII：ギェェェェェェェ！
ジャック：・・・？！・・・か、かわせない！

　距離を縮めようと接近していたのがあだとなり、勢いをそのままにＵターンして向かってくるアリゲラIIの攻撃をかわすことが出来ないジャック。
　その鋭利な嘴は狙いを誤らず、獲物に襲い掛かるのだった。

ジャック：・・・ぐわぁぁぁぁ・・・・

　なんとか嘴をよけようとしたジャックの肩を打ち抜く様にしてアリゲラIIが獲物に接触していった。
　攻撃の威力を和らげることが出来ずに右肩に重症を負い、地面へと落ちていくジャック。
　嘴にえぐられた右肩を左腕を庇いながら、市街地を離れた山中に落下する獲物を空中から眺めるアリゲラII。

ジャック：・・・くっ・・・・み、右腕が・・・？！・・・・

　周囲に土煙を巻き上げ、フルフルと立ち上がる獲物に攻める手を休めない空の捕食者。
　尾から放つ光の玉は山中に立つジャックに襲い掛かっていった。
　とっさに光弾をよけるジャック。
　しかし、「なんとかよけなければ」そんなジャックの考えは甘かったのかもしれない。

ジャック：・・・ぐわぁっ！（な、何故・・・）

　１発目はジャックの立っていた場所に命中し、地面を焦がすだけだったが、２発目は発射後に軌道を変えジャックの背中に命中したのだ。
　予期せぬ攻撃に姿勢を崩すジャックを追って放たれた光弾が立て続けに襲い続けた。

ジャック：・・・・はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・（誘導弾なのか・・・くそっ・・・）

　嘴、光弾・・・アリゲラIIの攻撃はそれだけではなかった・・・。
　ジャックの息遣いが荒くなり、体が痺れ始めた。

ジャック：・・・？！・・ま、まさか・・・毒？！

　嘴から流し込まれた強力な毒が徐々に体に浸透し、ジャックの体の自由を奪い始めていた。

アリゲラII：キェェェェェェェ！！！

　フラフラなジャック目掛けてアリゲラIIが急降下してきた。
　地面すれすれの高度を急速に迫ってくる捕食者に震える手で必殺技を打ち込まんとするジャック。

ジャック：く、くらえっ！はっ！

　腕を十字に組み、スペシウム光線を放つジャック。
　さっきとは逆で、高速で迫るアリゲラIIは放たれたスペシウム光線をよけることは出来なかった。

シャァァァァァァ・・・・ズドォォォォン！！

グサッ！

ジャック：・・・ぎゃぁぁぁぁっ！

　スペシウム光線が命中したものの、沈めるにはいたらず、その爆発の煙の中から勢い衰えずに現れた敵の必殺の嘴は獲物の左肩を打ち抜いた。
　右に続き左肩にも嘴が突き刺さり毒が流し込まれた。
　衝撃で地面に仰向けで倒れ、両腕が使えなくなったために起き上がることが出来ない状態になってしまった。

アリゲラII：グワァァァァ！グワァァァァ！

フワァァァァァァァァ

ジャック：な、なんだ・・これ・・・？！・・・い、糸？

　起き上がれずにアリゲラIIを見上げるジャックを見下ろし、口を開くアリゲラ。
　その口から吐き出されたのはフワフワの糸だった。
　白い糸はジャックに吹きかかり、体にまとわりつき離れなかった。
　その糸をよけようと後ずさりをするジャックだが、その動きは鈍く、嘴の角度を上げるだけでカバーされどんどん体に積もる糸が増えていった。

　次第に糸が増えていき、体が徐々に靄がかかったようになっていった。
　
ジャック：く、くそ・・息苦しい・・・・この糸にも毒が・・・・

　ジャックの想像した通り、糸にも毒が混ぜ込まれており、ジャックは体の内外を毒に包まれている状態にされてしまった。
　その事実に気がついた時にはすでに遅く、体の痺れが加速度的に進行し後ずさりさえも出来なくなっていっていた。

フワァァァァァァァァ

　容赦なく降り注ぐ糸にジャックの体は隅々まで汚されていった。
　体の輪郭はわかるが、完全に糸に包み込まれ、繭の中に閉じ込められた様になっていた。
　粘つくその糸はジャックを絡めとり、地面に巨大な繭の塊を出現させていた。
　
ジャック：う、うごけ・・ない・・・・

ピコン・ピコン・ピコン・ピコン・・・・

　繭の中で点滅を繰り返すジャックのカラータイマー。
　白い塊の中で唯一認識できるもの・・・それがカラータイマーだった。
　糸をかけるだけだったアリゲラIIは新たな動きを見せた。

アリゲラII：ギャァァァァァス
ジャック：・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・ま、まずいっ・・・・な、なんとか・・しないと・・・・

ピコン・・ピコン・・ピコン・・・・

　宙に飛び上がったアリゲラIIは空中で華麗にＵターンし、繭の中で光る赤い点へと突進してきたのだ。
　その鋭い嘴は勢いを身につけ、威力を最大にして獲物の心臓部に襲い掛かった。

ジャック：・・・？！・・・・ァァ・・・・・ァッ！・・・・・・・・・

　最大威力を備えた嘴はカラータイマーの中心部分に命中し、その強固なクリスタルさえも簡単に打ち砕き、再び繭を沈黙させたのだった。
　地面に転がり、動かない繭を両足で踏みつけ、しっかりと握り締め、巣へと持ち帰るアリゲラII。
　
　ジャックのいなくなった地面には焼け焦げと微かに残る糸屑と・・・そして毒に腐敗した森だけが残されていた。




ダダおじいちゃん：こうなると思うんじゃよ
小ダダ：強いねぇ・・・
ダダおじいちゃん：夜は長いんだ、もっともっと相談して負けない強い怪獣を考えていこう
小ダダ：うん、ありがとう、おじいちゃん。あっ、そうそう、この怪獣の名前は？（ニワトリ１号かなぁ・・・・）
ダダおじいちゃん：名前かい？・・・う～ん、スナギモ１号というのはどうだろう？
小ダダ：スナギモ・・・１号・・・・？
ダダおじいちゃん：あぁ、スナギモ１号だ・・・強そうだろう？
小ダダ：そ、そうだね・・・ははは・・・は・・・（は、ははは・・まだまだおじいちゃんのことはわからないや・・）



　これは平和なダダの村でのダダおじいちゃんと小ダダのお話。